厳密さに拘る癖に用語の無責任な用法を好み、感覚の庭を耕している

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

初めてのナン―周辺記憶

初めてインド料理に訪れたのは2014年の冬,乾燥した空気と厚着を強いる冷気が身を覆う昼下がり.喉を詰まらせるような失意で包まれていた僕の衰弱を見かねた両親が,近所に新しくできたインド料理屋に誘い出してくれた.幼い頃から好き嫌いが激しく,当時は…

庭園

ここは慣習だけが取り残された街。毎朝7時には規則を思い出させる鐘の音が波打つ。その鐘には願いが込められていた。確かに、想いが、祈りが込められていた。凝望を示す資料や文献はもうどこにも見当たらなかったが、音色はそれを主張し続ける。ああ、もう…

祖父の想い出と,死

ニ,三日前,僕と両親の三人で談笑しながら食事をしていると,父の携帯電話に着信があった.一番最初に振動音に気が付いたのは僕だったと思う.電話に出なくていいの,と聞くと「必要があればもう一度かけ直してくるだろう」と話していた.震える液晶画面に…